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#003 三門祐輝 和太鼓奏者

2022.10.30

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五感に響く音の波に乗って

よく晴れて気持ちのいい朝、和太鼓奏者でもあり、指導者としても活躍されている三門祐輝さんとの待ち合わせ場所に向かった。

今日お会いする場所は森の中。

やわらかな木漏れ日が地面に水玉模様を作り、小鳥たちが涼やかな声で囀っている。

遊歩道にはどんぐりや松ぼっくりが数えきれないほど転がっていて、一歩森の中に足を踏み入れれば、ここが名古屋の一部であることなど忘れてしまいそうだ。

和のテイストが感じられる上下黒色のシックな衣装に身を包んだ三門さんは、柔和な笑顔が印象的な方だった。

胴体よりも太い和太鼓を軽々と担ぎ、颯爽とした足取りで遊歩道を進んでいく。

「大きく見えるけど、中は空洞なのでそれほど重くないんですよ」

そう言って、ケースから取り出した和太鼓の胴の周りに次々と縄を縛っていく。

縄の縛り方で面を張る強度を調整し、良い音色が響くようにするのだそうだ。

黒くつややかで、人の手の気配が感じられる和太鼓は、堂々とした存在感がかっこいい。

時折、太鼓を叩きながら音の響き具合を確かめていく。

いよいよ演奏のとき。

バチを持って構えた瞬間から、三門さんが纏う空気が変わる。

ドン!と最初の音が打ち鳴らされた瞬間、まっすぐにこちらに向かって響いてくる音に圧倒される。

勇壮で、迫力のある音、音、音。

絶えず打ち鳴らされる和太鼓の音が、広い森のどこかで反響して跳ね返ってくる。

強さを感じるけれど、同時に心地よさもある音の波。

軽やかで、からりと響く音と小鳥の声が森の中で調和する。

目を奪われるものは、音だけではない。

腕を大きく使った動き、くるくると変わる見飽きない表情、森のさざめきも光も、その空間にあるものすべてを身に纏って、音と一体化する。

聴いているこちらの身体の中にまで大きな波がうねり、押し寄せるような感覚。

音の舟に乗せられて、どこまでも漕ぎ出していきたくなるような高揚感があたりに満ちていった。

インタビュー

ーー自己紹介をお願いします。

東海太鼓センターという和太鼓に関連する事業を行っている会社に勤めています。

それから、和楽器を中心とした太鼓集団「ゐづる」というチームを主宰しています、三門と言います。

ーー今日演奏した曲について教えてください。

この曲は演奏の最初の方にやる曲で「じゃんどこ」というタイトルにあまり意味はなくて、

お客さんにまず自分たちの世界観を知ってもらって、そこからその後の演奏につなげていくような曲になります。 

ーー演奏中に意識していることはありますか?

自分の指導する時の理念みたいなものにも関わってくるんですけど、いっぱい楽しんでもらえるというのが一番なので、どれくらい和太鼓のいろいろな顔を見せられるかで、初めて和太鼓に触れる方にも太鼓って楽しいんだなと思ってもらえるように考えています。

かっこいいんだな、も大事なんですけれども、それも含めて楽しいんだなと思ってもらえるかっていうのをすごく意識して演奏しています。

飽きさせないのは意識しますね、すごく意識します。

表情の作り方ひとつとってもそうですし、お客さんがいっぱい入っていると、わーっといる中で、こちらの方も楽しんでるかな、あちらの方も楽しんでるのかなって(気にしますね)。

太鼓というのはドレミファソラシドがあるわけではないので、どのくらい単調になってないかという中で、やっぱり太鼓の音は(刺激が)耳にきたりするので、どのくらい途中で耳休めができるシーンを持てるか意識したりしています。

太鼓をやっている人間がこれ言うの申し訳ないんですけど、ずっと太鼓の大きい音を聞いていると耳が疲れてしまうので(笑)

大きな音も鳴らすっていうのが和太鼓の本質なんですけど、どれくらい小さな音だったりとか繊細な音だったりとか織りまぜながら、時には太鼓じゃない音も入れながら進められるか。

そうすることで、やっぱり大きな太鼓の音って素敵だよね、かっこいいよねって思ってもらえるかはすごく意識しています。

ーー演奏者・指導者として続けていくコツはありますか?

なんでしょうね、「やめない」ですね。止まってもいいので、やめないですね。やめるともう、どうにもならないので。

例えば、自分の能力や周りの環境とか色々あるかもしれないんですけども、それでもやっぱり細々とでもいいので続けるというのがすごく大事なのかなと思います。

どんなに才能があってもやらなかったら人の目には触れられないですし。

もともと東海太鼓センターの専属プロチームの「打歓人(ダカント)」というチームに所属していたんですけれども、そこで活動を行なっていく中で、指導活動をメインにしたいという時に演奏活動がある。

例えば、演奏活動のために教室を休講にしなければいけないというシーンが多々出てきて、それって自分の中でなかなか折り合いがつかない。

だから演奏に出ません、と言ったら当然メンバーにすごく迷惑がかかるわけで、そこらへんのバランスがすごく取れなくなってきて。一度、打歓人を退団させていただいて、指導に専念しようと思ったんですけど、生徒さんに対してやっぱり自信が持てなくなる自分がいて。

生徒さんは一生懸命練習されている。

何かを形にするために頑張って、じゃあ自分はどうなのかと言われた時に、そこに自信が持てなくなってきて。

(自分にとっては)意外と必要ないなと思っていた演奏活動は、自分の中でも大事な軸だったんだなっていうのはすごく気づかされて、今度はバランスを崩さないようにやるといいな、と。

そういう場所として「ゐづる」は自分で立ち上げました。

ーーこれからの目標を教えてください。

東海太鼓センターに勤めているんですけれども、ここがどのくらい大きくなっていくか、会社の理念として和太鼓文化の普及と発展というものを掲げているので、その理念に沿って、東海エリアに文化として和太鼓を発展させていくことをたくさん考えたいなと思いますし、そういう場所もたくさん作っていけるといいなと思っています。

「ゐづる」は指導の部分に直結する活動になっているので、人の目に触れるところで演奏するとか、そういうことで我々の演奏を通して太鼓を楽しんで下さる方々が増えるといいなと思っています。我々としてまだ県外で演奏する機会はないので、そういう形でこれから活動が広がるといいなとは思います。

ーー今後の活動予定を教えてください。

12月11日(日)に名古屋市芸術創造センターで東海太鼓センター創立30周年記念音楽会を開催します。

これまでに東海太鼓センターに携わっていただいた多くの奏者の方々がお祝いとしてゲストで駆けつけてくださいますし、弊社の30周年というものを見てもらえる場ではあるので、ぜひ多くの方に来てみて、体感してもらえるとうれしいなと思うので、ぜひ来てください。よろしくお願いします。

また、来年2月19日(日)には瑞穂文化小劇場で僕が指導しているプロデュースチームの合同ライブを行います。

こちらは5団体で演奏します。インスタなどでも告知をしていますので、見に来ていただけると嬉しいなと思います。

さいごに

今回聴かせていただいた「じゃんどこ」は自然とわくわくしてくるようなリズムが印象的な曲です。

本来は3人で演奏するとのことで、ぜひライブに足を運んで聴いてみたい!と思いました。

三門さんは名古屋市や愛知県を中心に、学校などでも和太鼓の指導を積極的に行っています。

ぜひたくさんの方に、生の音とパフォーマンスを感じて楽しんでいただければと思います。