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アートは体感からはじまる

2023.02.08

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イベント、と聞くと少し身構えてしまうのはなぜだろう。

イベントの持つ非日常的な空気、イベントに集まる大勢の人、何か特別なところに入り込もうとする勇気。

そのどれもが少しずつ苦手で、いつの間にか足を運べないままイベントが終わってしまう。

そんな私にとって、久しぶりに心を惹かれたイベントが2022年4月に初めて開催された「Land of Pottery」だった。

アーティスティックな表現も好きだけれど、アートとクラフトの両面を持っている陶芸に関心を持つようになって数年が経つ。

個展や陶器市に足を運んで、お気に入りの食器を選ぶ。

料理をして、うつわを選んで盛り付ける。

日々の暮らしの中で、もっとも身近にアートを楽しめる機会のひとつだと思う。

個展以外にも最近増えてきたマルシェや、焼き物の産地で定期的に開催される陶器市でも作品は買えるし、作家さんにも会える。

けれど、既に形が出来上がった作品から選ぶことしかできない。

そういえば、うつわを好きになってから時間が経つのに、どのような過程を経て身近な陶器ができているのか知らないままに過ごしてきたという気もしていた。

「Land of Pottery」は作家さんがお客さんに直接販売するという従来のスタイルだけではなく、実際の制作過程を見せてくれるという。

どんな風に作っているんだろう、と心がわくわくした。

小雨が降る中、尾張瀬戸駅から少し離れた住宅街にある旧深川小学校へ向かう。

勾配のある細い曲がり道は、少し先の景色に意外性をもたらすのだな、と自分の知らない街を歩くことに少し高揚した。

「瀬戸体感陶器市」と謳われるそのイベントは、瀬戸の窯業に関わる人やコトにスポットが当てられていた。

これまでモノ・作品を買えるイベントはあったけれど、実際に作り手の人やプロセスを知れる機会は少なかったように思う。

作家さんの出展ブースでは、ロクロを回している人、釉薬の違いを見せてくれる人、染付の様子を実演してくれる人、などさまざまな形で制作風景を実演していた。

そこにふらりと立ち寄って買い物をする人もいれば、じっくりと制作の様子を見て質問している人もいる。

そのフラットで自然な距離感が「イベント」への気負いをなくして、リラックスした気持ちに変わっていった。

実際に制作風景を見ていると「陶芸」と呼んでいたものの多様性が見えていなかったことに気づく。

陶器、というだけでも実にいろいろな作り方がある、ということがはっきりと見えてすらいなかったことにも気づく。

作家さんにとっては当たり前だよ、と思うようなことが、知らなければ見えないし、解像度も低いままだ。

イベントに足を運んで、自分の目や耳で感じること。

知らなければ感じられないこともあること。

陶芸に限らず、どんなアートでも、見る人の解像度によってダイレクトに感じられる見え方も変わってくるのだと思う。

できたものが全て、という人ももちろんいるだろう。

けれど、できればどんな風に作品が作られているのか、という部分にも少し思いを馳せてみたい。

同じ作品でも、今の自分と未来の自分が見る作品は違って見えるのだろう。

たまにはイベントに足を運んで、何かを体感しよう。

その時間はきっと、未来の自分の解像度を上げてくれるはずだ。