作成者別アーカイブ: ArakawaYuko

アートにお金を支払うのは、物語の登場人物になりたいからなのかもしれない

「何かを買ったとき、なぜそれを選んだのか、理由を考えてみるといいよ」と言われたことがある。

なぜ今朝は、この店で、このドリンクを注文したのか。

だって今日は、期間限定商品の発売日だったから。きっと帰りには売り切れてしまうはず。

なぜあのコンビニで、このビニール傘を買ったのか。

今日雨が降るなんて知らなかった。多少の雨ならいいけれど、このあとは取材に伺う予定。さすがに、びしょぬれで行くわけには行かないだろう。せっかくならビニールではない傘がほしかった。

なぜ本屋に立ち寄って、この雑誌を買ったのか。

これは、毎月発売日を楽しみにしている唯一のもの。毎月の特集が関心事ばかりでどれも興味深く読んでしまう。その上、今月の巻頭インタビューは好きな俳優さんなのだ。これを買わない選択肢はないだろう。

何となく買っているものにも、多かれ少なかれ、自分なりの理由がある。

日常的な買い物だってこれなのだ。アートを買う場合には、もう少し特別で、強い理由がきっとある。

わたしの場合は、「そのアーティストの物語の登場人物になりたいから」かもしれない。

CDというアートをわたしが購入した理由

最近どんなアートを購入した? 自分に問うと直近のものとして浮かんでくるのは、CDばかりだった。

舞台やコンサートが好きなわたしは、コロナ禍を経験して一層、エンターテインメントは生が一番だと思ってしまう。

最近はもっぱら、応援しているアーティスト・杉本琢弥くんの所属するダンス&ボーカルグループのライブ会場に足を運ぶ。そして、先日発売したメジャーデビューシングルCDを購入し、持ち帰る。

ステージで見せるパフォーマンスの裏には、公演時間の何倍もの準備時間がある。

テーマや会場に合わせたセットリストを考え、音源を準備して、演出を考える。

当日のための準備はもちろんだが、ベースとして、ステージ上で披露できるだけの歌やダンスの技術を身に付けておかなければならない。客席を惹きつけるパフォーマンスができるようになるまでには、長い時間がかかる。インスタントなものには心は動かされないのだ。

その中の1曲として披露されるメジャーデビュー曲は、彼自身が作詞作曲を手掛けたものだ。曲をつくって、そこに歌詞を乗せる。それをグループで披露する。「この曲、僕がつくりました」と口にすることは簡単だけれど、どの作業一つとってもわたしにはできそうにないものばかり。

収録した3曲を、彼が音楽の道を志してから注いできた10年分の時間と、費やしてきた努力と、かけてきた想いを一緒に閉じ込めたCDが、1枚1,200円で手に入る。こんなの今のわたしには、買わない理由なんて見つけられなかった。

アーティストの描く夢を一緒に見るわくわく感

インタビューさせていただく方には、最後に、今後の目標や展望をお伺いすることが結構ある。この質問には想像もしていない答えが返ってくることも多いので、毎回わくわくしてしまう。

本メディアではこれまで2名のアーティストさんの取材を担当し、お二人の描いている今後についても伺った。

テクスチャーアーティストの徳島空さんは、離島をアートで町おこしするという。お父様のご出身で、鹿児島県にある喜界島。現在は住んでいる人も減っているという場所を、アートの島として盛り上げられたらという夢を語ってくださった。しかも、10年以内に実現します! という期限付き。徳山さんのつくる和要素のある作品はもちろん、他のアーティストの方と掛け合わせた作品作りやイベントもいろいろできそうだと、目の前で徳山さんの“やりたい”が膨らんでいくのを目の当たりにした。

水墨画家の長嶋芙蓉さんは、「水墨画への間口になりたい」と繰り返した。難しくないよ、楽しいよ、とも。水墨画に触れてほしい思いで気軽に参加できるワークショップなども行っている中で、「いつか学校をつくりたいと思っているんです」という言葉が滑り出た。例えば、と話してくださった、全員が白い服を黒く染めていくアートTシャツ作りのイベントを、夏の暑い日に汚れることも濡れることも気にせずにできたら。少し想像しただけで子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてくる。どれだけ笑える時間になるだろう。

子どもの頃から墨を使った作品づくりに自然と手が伸ばせる環境があれば、日本に心の豊かさが増す気がする。

今はまだ彼らの頭の中にしかないけれど、描いている未来が実現したら、どんなに楽しいだろうと思ってしまう。そして自然と、実現するときにはその場にわたしも一緒にいたいなと願ってしまうのだ。

アート作品の購入は、アーティストの描く未来に登場人物になれる可能性を買っているのかもしれない

「お金は、コミュニケーションツールだよ」と聞いたことがある。

モノがほしくて買う時代は通り過ぎ、体験できるコトを求めてお金を使うことに価値を感じる人が増えている。

わたしがアートを買うとき、作品にお金を支払う理由のひとつは、その作品ができるまでの感謝の気持ち。これまで諦めずに活動し続けてくれて、素敵な作品と出会う機会をつくってくれて、ありがとう。

それ以上に強い理由は、彼らの描く未来の物語の、登場人物になりたいからなのかもしれない。

応援したいアーティストの手掛けた作品を、購入する。手に入れたアート作品は、彼らが実現しようとしている未来に参加できるチケットになる。“いつか”が叶う時、外から眺めているだけの傍観者でいるなんて寂しい。好きで応援するのなら、未来の物語に登場できる可能性を購入しておきたいと思うのだ。

#005 長嶋芙蓉 水墨画家

紙に映し出すのは、記録ではなく心の状態

「ゆっくり描くようにするんですが、もし速かったら言ってくださいね」

事前に聞いてはいたものの、思っていたよりもずっと速く白い紙が染められていく様子に驚いてしまう。

筆をもつ腕に、迷いは見えない。

真っ白い画用紙を前にした子どものような気軽さで描いていく様子を見ているうちに、事前に抱いていた水墨画へのイメージはとけていった。

「いろんなことを、『やりたい!』と思ってやっているうちに、流れに身を任せていたらここにたどり着きました」と、何でもない様子で言う芙蓉さん。

水墨画も、自分の意志で選んではじめたものではない。

師匠と出会い、その人柄に惹かれて文通をしているうちに、展覧会に招かれていったところ、気付けば水墨画パフォーマンスチームの一員として発表されていたという。

そんな状況も受け入れられる心の自由さが、作品から感じられるやわらかさになって表れているのかもしれない。

「写真のように見たままを描くなら、描く必要はないかなと思っています」

水墨画を描くときに大切にしているのは、エネルギー。

うれしい。悲しい。疲れた。ああ、ビール飲みたいな。

目には見えないけれど、確かにある“気持ち”。

習慣になっているランニングで感じたものを持ち帰り、忘れないようにメモをして残す。

作品には気持ちが揺さぶられたところを表現して、映し出す。

「文字にするとか、動画に残すとか、表現の仕方が違うけれど、表現したい気持ちはみんなもっていると思うんです。私の場合は一番合う表現が、水墨画というだけで」

描く様子を見せていただきながら会話をしているうちに、芙蓉さんの手元の作品はどんどん筆が加えられ、華やかさを増していく。

そもそも、水墨画を描く最中に話しかけても大丈夫だなんて想像もしていなかった。集中して描くものだろうから、作品が仕上がるまでは、邪魔にならないよう息を詰めていようと思ってきたのに。

「これは、家にあった空き瓶。これは、100円ショップでも買えます。家にあるものや簡単に手に入る道具でもすぐに水墨画を始められますよ」

水墨画は、道具選びも技術の一つ。だから、どんな道具を使っているかを明かさない場合も多いという。そんな世界に身を置きながら、気軽で、飾らず、どこまでも自由な人だ。

作品づくりの様子を見るほど、話を聞けば聞くほどに、こちらの気持ちまで寛いでいく感じがした。

インタビュー

ーー自己紹介をお願いします。

はい、長嶋芙蓉と申します。墨を中心とした絵を描いています。

仕事で今の師匠のところに行く機会がありまして、そこで今の師匠にお会いしたら「もう少しこの方とお話がしたいな」なんて思って文通していたんですよ。

そんな中たまたまその先生の教室にお伺いする機会があったのですが、伺った日が女の子5人くらいでやっていた水墨画パフォーマンスをするチームの結成日だったんです。

私はそれを知らずに呼ばれていて、やるとかやらないとかじゃなく、もうやることになっていたという。女の子が集まっていて、「皆さんこれでやりまーす!これがメンバーです!」みたいな感じで何の説明も聞いておらず、おう、と。(笑)

結果的に水墨画を始めることになりました。

ーー今日描いてくださった作品を紹介してください。

自分の中で最近ブームになっているもので、私は『ご縁の花』と呼んでいます。人と人とをつなぐご縁のようなもの。

少し前にお仕事で、ワサビとソバの花を描かせていただいたんですが、そこからその2つの花がすごく面白いなと思うようになりまして。

そこから派生して自分のインスピレーションを湧き立ててくれるような存在です。

ーー作品を描くときに意識していることは何ですか。

生命力をすごく大事にしています。

例えば枯れている花と、すごく生き生きしている花が一緒に咲いていることってあるじゃないですか。それって、枯れている花があるからこっちの花が綺麗に咲ける訳で。

それって人も一緒だよねって思うんです。衰退していくものがあるから、繁栄していくものがあるし。

そういうものを見て、自分の心が揺さぶられたところを可視化するようにしています。見たものをキャッチして、それを自分の中を通して外へ出す。

そんな風に、写真で伝えられないことを絵で描くと思っているんですね。

ーー芙蓉さんの思う、水墨画の魅力を教えてください。

色が少ないことですね。白と黒だけの、水と墨だけでできる芸術だと思っています。

だからこそ、その中にある何色もある部分をご自身が見た色に変えてもらいたいなと思っています。

色は観る方が自分が決めればいいし、私が決めることではない。私はある程度の提案をします。でもその先の受け取り方は、それぞれ違っていいんじゃないっていう思いがあるんです。

すごく自由度が高いんじゃないかなと思って、水墨画の白と黒のアートを選んでいます。

ーー今後の目標があれば伺えますか。

水墨画への間口を広げる取り組みをしたいです。

水墨画に対しては、すごくクラシックなイメージをもっている方が多いです。もちろんクラシックな滝だったりとか、山水画だったりも素晴らしいと思うんですよ。伝統だからやっぱりなくしたらいけないものだと思うし。

だからこそもうちょっと間口を広げて、「私でもできるかもしれない!」って思えるような取り組みをしたいと思っています。

お子さんと一緒にできるワークショップとか、お勉強ではないものを。例えば全員白いTシャツを着て、「もう汚れる準備OK?じゃあいくよ!」って思いっきり全身汚す。その汚れたものは全部、アートのお洋服になるよっていう遊びとか。

そういうことをやると、「全然むずかしくないのにこんなにかっこいいのできちゃった!」って嬉しい体験に変わると思うんですよね。そういうやり方で、どんどん興味をもってもらえたら。

私が間口になりたいなと思っています。

ーー芙蓉さんの描かれている、抽象画以外の作品についても教えてください。

はい、抽象画以外にもポートレートのようなものを描いています。

どこかの国の、どこかの街に、本当にいるかもしれない。そんな女の子たちのお話を描いたシリーズ“トレンドガール”になります。

昔、ヨーロッパを鉄道を使って巡る貧乏旅行をしたことがあります。そのときに自分が訪れた街の様子や、あのときこんな子に会いたかったなとか、あの子すごく素敵だなとか、ここでこんなものを食べたなとか。

自分の旅の思い出から、「こういう人になりたい」と思ったり、「こういう人がいるかもしれない」と想像したりするんですよ。そこから派生してきた子たちを描いています。

ストーリーにそって絵が繋がっていくんですが、ストーリーの全貌は、ご購入した方にしかお知らせしていません。

ーー芙蓉さんは素敵な作品を作り続けていらっしゃいますが、アートを続けられずにやめてしまう方も多いです。芙蓉さん自身がアートを続けられているのはなぜだと思いますか。

ぶっちゃけお金もすごくかかるし、精神的な負担もかなりかかる。

それでもやっているのはなぜと聞かれたら、自分の思っていることを外に出したいから。そのための方法が私にとっては墨絵で、水墨画で描くっていうのが、自分の気持ちを外に出しやすいんだと思います。

だから制作をずっと続けていられるのかな。

水墨画、楽しいよ!

水墨画を、身近な存在に戻していく

水墨画は過去には、新聞紙のように生活の身近なところにあったものだそう。

「水墨画は、気持ちのはけ口にも使えますよ。口には出せないネガティブなことも、描くなら誰にも迷惑はかけませんから」と芙蓉さんは言い添えた。

白と黒という限られた中で、無数の色を選べるアート。

その自由度の高さを知っているからこそ、もっと多くの人が水墨画を知って、実際に触れてほしいと願っているんだろう。

水墨画なんて高尚で、ハードルが高く、難しくて取っつきにくい。

多くの人が自分には遠い存在だと感じているのを払拭したい思いが、難しい技法の名前には触れず、身近な道具で始められる墨アートのワークショップなどに反映されている。

まずは楽しんでほしい。そのための間口になりたい。

そう願う芙蓉さんをきっかけに水墨画の世界を覗いてみると、新たな気付きや発見があるかもしれない。

再び人々が気軽に手にするものになっていったら面白い。

#002 徳島空 テクスチャーアーティスト

足を踏み入れたとたん、さまざまな色・模様の壁に囲まれる。すべての壁が、面ごとに違った特殊塗装が施されている。

手掛けたのは、東京都大田区を中心に塗装業をしているPAINT WORK nanairoの代表・徳島空さん。17歳から建築塗装に携わってきて、7年目にして起業。現在は一般的な建築塗装の仕事の割合が多いというが、今後さらに広めていきたいと考えているのが“特殊塗装”だ。指定の色で均一にムラなく染める壁面塗装に対して、塗料や塗り方の工夫で風合いをもたせるのが特徴。「デザイン性が高く、多くのパターンを生み出せるので建築塗装とアートの間に位置しています」と徳島さんは言う。

取材に訪れた際は、2種類の特殊塗装を実演してくれた。

海面、大理石、石材……塗装でリアリティのある質感を作り出す

まずは、海面の様子を壁面に描く技法・マーベリクス。ベースの上に、U字型をした刷毛で白い塗料をのせていく。U字型を活かし、色味が異なる2種類の白を同時に塗っていくことができる。他では目にしたことのない着色方法だ。全面に白をのせた後で、別の刷毛を手に取る。白い塗料が乾く前に塗料に含まれるを砂のような粒を移動させるイメージで、海面が波立つ様子を表現していく。模様をつくる上でのポイントを尋ねると「色の境目をはっきりさせすぎると人工的になってしまいます。いかに自然に見えるかを意識して作業しています」と手を動かしながら教えてくれた。そうしているうちに、波の起伏する様子が描かれていった。

続いて見せてくれたのは、大理石風の仕上がりとなる技法・ロココ。事前に準備しておいたと取り出した青色の板には、塗料を2度重ね塗りしてあるという。取材時は3度目の重ね塗りを行い、乾き具合を見計らって、仕上げにコテで表面を磨き上げていった。体重を乗せながらさまざまな方向から磨いていくと、徐々に光沢が出てくるのと共に、事前に塗った際の模様が浮き上がってくる。その質感は、正に大理石のよう。塗料を塗った時点でのマットな印象からは想像できない美しい仕上がりだ。

徳島さんが特殊塗装に出会ったのは4年ほど前だという。表現の幅の広さや、仕上がりで与えられる感動の大きさに惹かれて技術を身に付けた。現在SNS等での発信活動も積極的に行っている彼が、どのような想いで特殊塗装を行っているのか。特殊塗装の魅力や、描いている展望とあわせて話を聴いた。

ーー始めに、自己紹介をお願いします。

徳島さん:徳島空と申します。現在25歳で、普段は建築塗装の仕事をしているのですが、イタリアン塗料を使った「特殊塗装」も行いながら、今後は変わったこと・面白いことをやっていきたいなと思っています。

具体的に、取り組んでいるのは色や質感を表現するテクスチャーアートと呼ばれるものです。壁に奥行きなどを表現できるのがめちゃくちゃ面白いので、このイタリアン塗料を使ってさらにいろいろな奥行き感だったり、ちょっと古びた感じだったりを表現できればなと思っています。

つくりたいのは、「何かすごい」ものですね。すごく絵のテクニックがある訳ではないのに有名な人もたくさんいるし、アートって「何かすごい」が一番すごいと思うんです。僕は器用でもないけれど、「何かすごい」って感じさせるものを作っていきたいです。

ーーテクスチャーアートを始めたきっかけを教えてください。

建築塗装の仕事をしている中で知りました。高層ビルだと、高層階だけ壁の仕様が変わっていることがあるんですよ。それを、こういったイタリアン塗料を使って作るんです。「塗装ってただ塗るだけだと思っていたけれど、こんなアーティスティックなのもあるんだ。面白いな」と思って。

もちろん経験を積んだ職人さんが身に付けた細かい技術なんかはあるけれど、やっぱり普通に塗るだけだと、白くするのも黒くするのも誰だってできる。それがテクスチャーアートだとお客さんに「何かすごい」と思ってもらえるものを作れるので、それが魅力ですね。

ーーテクスチャーアートで使う道具の紹介をお願いします。

使う道具は、U字型の刷毛、ブラシ、コテなど。正直、まだ道具にそこまでこだわりはないので、逆にここから自分なりのこだわりをいろいろ作っていきたいと思っています。

特徴的なU字型の刷毛は、同時に2職の色を塗れるようになっているんですが、一般的な塗装だと使うことはありません。例えば上を白、下を黒で塗るみたいに、2色を塗る必要がある時でも基本的には同時に塗る必要はなくて、白を塗って、乾かしてから黒を塗ればいいだけですから。今はマーベリクスという技法のときに使っているだけなので、別の使い方も考えてみます。逆に、面白そうな使い方があったら教えてほしいです(笑)。

ーー作品について紹介してください。まずは海面の様子を描く「マーベリクス」から。

これはベースの塗料の上にU字の刷毛で色味の違う2色の白を塗って、潮の様子を自然に出していく感じです。潮の表現の仕方がポイントで、始めの頃はずっと潮が全部繋がるようにしていたんです。今はあえて繋がらないように刷毛で崩したり、散らしたりして。とにかく、人の手を加えていない感じを出します。作業中は、俯瞰で見るのが一番重要かな。ずっと近くで見ていると、「ここ変だな」という部分があっても分からなくなるんですよね。だから遠くからも見るように気をつけています。

ーー大理石風の仕上がりとなる「ロココ」についても、ご紹介ください。

コテでいろいろな方向に塗料を層状につけていって、最後に磨くと仕上がります。これは、段取りさえ間違えなければそんなに下手な方向にいくことはありません。でも、めちゃくちゃ綺麗に仕上がるんですよ。

ーー今後の目標を聞かせていただけますか。

今はまだ従業員が一人ですが、もっと増やして、塗装を教えられる施設をつくるなどして後輩たちを育てていくのが目標です。一般的な建築塗装から特殊塗装までを教えられるような設備が整っていて、練習できる施設があれば技術を覚えるスピードを速められるのにと思っていたので、会社としてそういう場を作りたいです。

個人的な目標としては、鹿児島県の離島・喜界島をアートで町おこししたいと思っています。僕は母親の出身地である八丈島生まれなのですが、父親の出身が喜界島なんです。人口減少しているので島のために、というとそれっぽい言い方になってしまうんですが、「何かすごい」を世の中にもたらしたい思いを喜界島で実現します。生きているうちに人に影響を与えたり、嬉し泣きするくらい感動させたりしたい思いと、親孝行したい気持ちとをでかいスケールでやりたいと考えたら、それがベストだなと思って。10年以内にやります!といろいろな人に宣言しているんです。

ーー徳島さんは、アートをもっと広めて身近なものにするにはどうしたらいいと思いますか。

僕の考えている喜界島の町おこしもアートを広める手段になると思います。いろいろなアーティストさんが島に来て、アートと、日本の和をかけ算したイベントなどを行う。すると、観光で喜界島が盛り上がる。日本も盛り上がる。そしてアートも盛り上がる。そんな風にしていければと思っています。

テクスチャーアートで「何かすごい」を実現していく

建築塗装の世界で特殊塗装に出会ったことを機に、テクスチャーアートを用いて出身地の町おこしや後輩育成についても考えている徳島さん。休日が取りにくい等、業界で当たり前になっている働き方を変えていきたい思いや、作業着をプロデュースしたいアイデアももっていると、熱を込めて語っていた。

想い描いていることを実現していくため、SNSでの発信に力を入れたり、他の分野の人・モノとコラボレーションしたりと、まずは特殊塗装の認知を広げていきたい考えだ。取材時だけでも挑戦してみたいことが次々と生まれており、今後も増えていくのだろうと感じられた。

特殊塗装を使ったテクスチャーアートで、徳島さんはどんな世界を創り出していくのか。今後の動きに注目したい。